「屋上庭園」がつなぐ二子玉川の自然 〈玉川髙島屋S・C〉

SDGs

 東神開発株式会社では、各ショッピングセンターにおける緑化に取り組み、街の自然環境保全を推進しています。今回は、玉川髙島屋ショッピングセンター(以下、玉川髙島屋S・C)の屋上庭園「フォレストガーデン」「ローズガーデン」における生物多様性の様子や環境教育への取り組みについてご紹介します。


玉川髙島屋S・Cの屋上に広がるふたつの屋上庭園

 1969年のショッピングセンターの開業とともに「フォレストガーデン」が、その後「ローズガーデン」が誕生しました。

 

南館から望む「フォレストガーデン」

 1989年には20年ぶりに「フォレストガーデン」をリニューアル。多摩・武蔵野の原風景を構成する雑木林を再現するように、下草から高木まで様々な樹種や植物を選択し、利用者が四季折々の花や実が楽しめる空間と、虫や鳥などを呼び寄せる生物多様性を育む空間づくりを目指しました。

 現在、約4,300㎡の屋上庭園には160種類の植物が生育しています。周囲の多摩川や国分寺崖線をつなぐ“ハブ“となる緑地を目指し、多様な生きものが集まり、生息に適した環境を提供。人と生きもの、双方の「憩いの場」として愛されています。

在来種の「エゴノキ」の花。5~6月頃、かわいらしい白い花を咲かせる。

みどりも人も育てる

 豊かな自然環境を生かし、生きもの観察を含めたお子さま向けの「親子自然散策ツアー」「二子玉川ミッションツアー」、植物を活用した「クラフトイベント」など、みどりを利活用した様々なイベントを実施。ガーデン利用者の生きものへの理解を深めることにより、自然を大切にする心を育てる取り組みを行っています。

屋上庭園を巡る「親子自然散策ツアー」
屋上庭園の植物を使った「リースづくり」

環境省「自然共生サイト」への認定

 このような環境と、環境教育などへの取り組みが評価され、2025年3月14日、環境省の令和6年度後期「自然共生サイト」に「フォレストガーデン」と「ローズガーデン」が認定されました。

 「自然共生サイト」とは、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を環境省が認定する区域の名称です。自然共生サイトとして認定された区域は、国際データベースであるOECM(※1)に登録され、2030年までのネイチャーポジティブ(※2)を実現に向けた目標の1つである「30by30目標」(※3)の達成に貢献することとなります。

SC事業本部玉川事業部管理グループ 真野彩音

 玉川髙島屋S・Cは、商業施設としては珍しいほど緑にあふれた庭園を有しています。創業当時から緑園活動に取り組んできた商業施設として、当社の取り組みとこの緑地をぜひ多くの方に知っていただきたいという想いから、自然共生サイトへの登録申請を行いました。
 自然共生サイトは森林や湿地、里山のイメージが強いですが、都市緑地も自然環境・生物多様性の保護・維持的役割を果たす第一歩として登録されたことは大変光栄に思います。生物多様性に配慮しつつ、商業施設という特性上、お客様の安全管理にも配慮した緑地の維持管理は難しいこともありますが、人と生きもの双方にとっての憩いの場を提供していきたいです。

※1 Other Effective area-based Conservation Measuresの頭文字をとったもので、国立公園などの保護地区ではない地域のうち、生物多様性を効果的にかつ長期的に保全しうる地域のことをいう。
※2 自然を回復軌道に乗せ、生物多様性の損失を止め、反転させること
※3 2030年までに陸と海の30%の保全を目指す国際的な目標。
2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年グローバルターゲットの1つに盛り込まれている。


長きにわたるパートナーとの連携

 屋上庭園の竣工以来、50年以上にわたり施設内の緑地の新設・管理に携わってきた緑の専門家が、「株式会社グリーン・ワイズ 」のみなさん。玉川髙島屋S・C全体の植栽や壁面緑化など、緑地の保全にご協力いただいています。

 「自然共生サイト」への登録申請に向けて、株式会社グリーン・ワイズのみなさんと共に、生きものや植物の種類の調査を実施。日々の緑地管理の傍ら、約1年間にわたり「フォレストガーデン」「ローズガーデン」の調査を実施していただきました。

株式会社グリーン・ワイズ 竹内恵子さん

 メンテナンススタッフと連携し、日々の植栽管理とともに生きものモニタリングを実施した結果、飛来する生きものの種類から地域とのエコロジカルネットワークのつながりを確認できました。植栽管理ではIPM手法(※4)を取り入れ、農薬使用量の削減と景観に配慮した剪定を行い、生きものにとって利用しやすい環境づくりに努めてきました。これらの取り組みが採餌・営巣・繁殖に適した環境を形成し、自然共生サイト認定につながったことを嬉しく思います。
 また、「フォレストガーデン」や「ローズガーデン」では、ワークショップなどを通じて生態系サービスの文化的サービスを提供しており、こうした長年の活動が評価されたことも喜ばしく感じています。今後も、生きものにも人にも心地よい緑地空間の創出に努めてまいります。

▶株式会社グリーン・ワイズさんへの過去のインタビューはこちら
 自然の循環を生み、人と人をつなぎ、時を超えて受け継がれていく、緑の空間づくり | 玉川高島屋S・C

※5 生態系への影響リスクの高い農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えた総合的な病害虫・雑草管理の手法


これからの取り組み

 今後、私たちが開発・運営する施設と、街全体や周辺とのみどりのつながり「エコロジカルネットワーク(※5)」を考えていく必要があります。そのためには、地域のステークホルダーのみなさまとの連携が欠かせません。

 今回ご紹介した玉川髙島屋S・Cでは、近隣の二子玉川公園や世田谷区の公園緑地、二子玉川ライズの再開発で創出された緑地、多摩川の河川敷など、周辺環境との連携を推進。さらに多様な生きものの生育環境の創出のため、今後植栽する植物の種類の選定やいきものの生育環境を提供するネットワークづくりを実施しつづけていきます。

▶玉川髙島屋S・CにおけるSDGsの取り組みは、こちらのサイトでもご紹介しています。ぜひご覧ください。
 玉川高島屋S・C|SDGsの取り組み ひとも空気も、みずみずしい

※5 生態系ネットワーク。生物の生息・生育空間とその緩衝地域を適切に配置・保全し、これらを生態的な回廊で有機的につなぐこと